「自分に厳しくすればいい」というわけではない
- 岡本ジュンイチ
- 2021年6月16日
- 読了時間: 5分
「人にやさしく、自分に厳しく」という言葉があります。
それは、自分自身を適度に律して、他人に対して寛容になることの大切さを説いた言葉です。
ですが、心が疲れている方の多くは、その言葉を履き違えている傾向があるようです。
かくいう筆者もその一人でした。
「人にやさしく」することはとても大切なことなのですが、心が疲れている状態で「自分に厳しく」することに対しては非常に注意が必要です。
何でも「自分に厳しくすればいい」というわけではありません。
なぜそう言い切れるのか。
今回はそのことをテーマの中心に据えて、書かせていただきます。
●自分を大事にできない人は、他人を大事にできない
なぜ「自分に厳しくすればいい」というわけではないのか。
それは、人にやさしくできる人間は、同時に自分も大切に尊重できる人だからです。
人にやさしくできる人とは、そもそも「自分がやってもらって嬉しいこと」を実践するように心がける人のことです。
「自分がやっていて嬉しいこと」を知るには、適度に自分自身にやさしく接しておく必要があります。
自分に厳しく接しすぎている人には、本当の意味での「やさしさ」は知り得ません。
ゆえに、ただ自分に厳しくすれば幸せになる、ということはあり得ないわけです。
たしかに、時には自分に厳しくする必要がある状況もなくはないでしょう。
受験勉強をする必要があるのに、ちっとも勉強しないでいたら高校や大学には受かりませんし、自分のついている職場の仕事をほったらかしていたら、まわりの人たちにも多大な迷惑をかけてしまいます。
筆者は、なにも「自分に厳しくすること」を全否定しているわけではありません。
ただ、自分に日頃から厳しくしている人には絶対に見えない、心やさしい世界観があることを指摘したいだけなのです。
きわめて言えば、自分を大事にできない人は、他人を大事にすることも絶対できません。
日頃から自分自身にナイフを突きつけている人に魅力を感じる人なんて、決して存在し得ないでしょう。
●自分にやさしくすることは、立派なセラピーである
自分に厳しくすればいいわけではない理由は、他にもあります。
それは、自分にやさしくすることは立派なセラピーだからです。
休みたい時に休んで、やりたいことをやりたいだけやる。
そういう行為もとても自分自身を回復させるのにとても重要なセラピー行為なのです。
自分の本音に素直になって、自分自身をより幸せになる環境に身を置くように心がけましょう。
自分を甘えさせてもいいのです。
絵を見たければ素直に美術館に行けばいいですし、映画や演劇を観に行きたければ素直に劇場へ足を運びましょう。
そういう心のサインを大切にしていく生活こそが本来の幸せなあり方ですし、自然の摂理に沿ったシンプルな生き方なのです。
誰もあなたが自分にやさしいことを否定しませんし、そんなことを他人が否定する権限も資格もありません。
ぜひ自分にやさしく接するように、心がけていきましょう。
●無駄な道徳観を捨てよう
では、具体的にどうやって自分にやさしくすればいいのか。
それはいたってシンプルです。
あなたの中にある、無駄な道徳観を捨てることです。
「人はこうでなければいけない」、「人とは〇〇でなければならない」などという先入観をぬぐい捨てて、もっとありのままの自分を受け入れましょう。
人間誰しも、怒りたい時はつい怒れてしまうものですし、泣きたい時は泣いてしまうものです。
自分の怒りをぶつけることで相手が迷惑するかもしれない、などと考える必要もありませんし、自分が泣くことで相手を不愉快にさせてしまうかもしれない、などと罪悪感に駆られる必要もありません。
道徳とは、あくまで人間同士が円滑に活動できるための手段であって、人類唯一の目標ではないからです。
正義感を持つことは大変立派なことですし、自分を律する姿勢でいること自体は大変尊いことです。
ですが、その正義感や自律心が心の病の元になっていたとするなら、これほどはた迷惑な道徳観はありません。
誰もあなたが不幸せになるほどの正義感なんて求めていませんし、心の病におかされるほどの自律心を求めてはいないはずです。
そもそも、何でもかんでも「自分に厳しくすればいい」という価値観そのものが乱暴です。
適度な道徳観は、人のコミュニケーションをよりスムーズに行うためにはある程度必要ではあります。
しかし、あまりに強烈で過激な道徳観は、他人を不幸にするだけでなく、あなた自身をもどんどん蝕んでしまうのです。
他人にやさしくできるのであれば、自分自身にもやさしくすることは確実にできます。
無駄な道徳感を捨てましょう。
そして自分自身を過度に厳しく評価するのをやめるように心がけましょう。
そういうやさしさは、必ずあなたが生きるためのモチベーションとなります。
筆者は、そう確信します。
●あとがき
いかがでしたでしょうか。
今回は、何でも「自分に厳しければいい」というわけではないことを書かせていただきました。
何か参考になったことはあったでしょうか?
繰り返しになりますが、他人にやさしく接する経験があるのなら、必ず自分にもやさしくできます。
自分自身を大事にするように心がけて、もっと幸せな日々を過ごしていきましょう。
以上で、今回のコラムを終了させていただきます。
どうもありがとうございました!
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